2021年3月11日木曜日

3.11に寄せて


 飯舘村の大山津見神社は狛犬ではなく、狛おおかみさまです。
飯舘村は震災のあと、原子力発電所の事故により全村避難となりました。
大山津見神社の狛おおかみさまは、火伏せの神様です。農業が中心の村を火から守っていました。震災後、村の方が避難されたあとに、この神社は火災がおきてしまいました。空気が乾燥していたのでしょうか。残念ながら社殿は燃えてしまいました。
 この大山津見神社の社殿の天井は狼たちの絵が描かれています。とても貴重なものだったので、震災前、資料保存のため、写真を残していました。これが功を奏し、社殿を新しくしたさい、火事で焼失しつつも、完全に修復できたのです。見ごたえがありますので、ぜひ見に行ってほしいと思います。
 飯舘村では、臨床美術のアートボランティアを2015年~2020年まで実施させていただきました。避難指示解除後、村のデイケアで臨床美術を実施させていただきました。飯舘村のおじいさん、おばあさんたちは、穏やかで明るく村が大好きで、お会いするのが毎回楽しみでした。飯舘村は空が広くて、緑が美しく、何度でも行きたくなる村です。
 私は芸術療法のメソッドを2種類取得しているので、それぞれのメソッドで、被災地でのアートボランティアを参加していました。言葉が拙い子どもたちは、お絵かきでココロを元気にしていきました。村に戻ったお年寄りたちは、村で暮らせる喜びやまた会えた村人どうしの笑顔を、色におきかえてくださいました。
 絵を描くことは、受験に必要ないから。無くても生きていけるものだし。有事のさいは一番必要ないものだしね。悪いけど生活の方が大事だから。…これらは、実際に私が耳にした言葉です。もちろんその通りですし、事実です。でも、震災後のボランティアをしてきて、どうしてもそう思えないのです。やっぱりアート・モノづくりは必要なのです。。
 参加された方ほとんどの方が、いっときでも忘れられた。すっきりした。みんな流されたけど作品がたまってきたよ。そんな言葉ひとつひとつが答えです。個に戻ることができる時間があるかないかで、心の置きようが違ってくる。そう思えてなりません。
 震災から10年。長かったとはぜんぜん思えないし、あのころのままのことはたくさんあるけれど、確実にあの時の自分とは違う自分がいます。
 今、アートボランティアのまとめをしています。定期クラスの参加者さんにお届けできればと思います。